そして明日も生きようと思う

好きなものは、アニメ・アイドル・あまいもの。30代に向かってお散歩中。

KING OF PRISM i love you,baby(第9話 アレク回感想①)

待ってました、大好きな大好きなアレク回。
初めてアレクを見たのは、友人に「とにかく常軌を逸した上映形態の映画がある、仕
事に疲れているなら行くべき」と進められ、金曜深夜に行った新宿バルト9。素敵な声と真っ直ぐな瞳に魅せられ、映画館に足を運ぶたび、「今日は勝てるよ-!」と応援するも毎回勝てず、誕生日にも応援に行ったのにやっぱり勝てず、ひょっとしてアレクは永遠に勝てないのかな、もうアレクのこと応援するの疲れたな、だって勝てないんだもん…そんな気持ちを涙で押し流し、ずっと応援していてよかった、大好きな気持ちを失わなくてよかった、そんな風に思えた、大切な回の話をさせて下さい。

映画館で最速上映を見た際には、レオくん、ユウくんと続いてきてもう涙ぐずぐずで頭もぼうっとしかけていた中で始まった回でした。しかし、いきなりアレクの顔が違う。今までの、特にキンプラのアレクは、さながら愛に飢え暴走しターミネーターでした。鋼鉄色に身体を鈍く光らせ、機械的に光る眼に一切の人間味はなく、己の理想をガソリンとして暴虐の限りを尽くし会場を破壊する、そんな大好きな男の子の姿を見たくなくて、キンプラはほとんど鑑賞できませんでした。それがどうでしょう。あの時から理想を変えず、己を追い込み高みを目指す姿勢は変わっていないはずなのに、アバンパートでステージに立つ彼の眼は、力強く、優しく、そして美しいものになっていました。ここに至るアレクを作ったのは、きっと、彼自身の強い「想い」と、彼の心から溢れんばかりにふんだんに注がれた愛情。その2つの側面を丁寧に描いている前半パートだったと思います。

時に同じような文脈で語られる、タイガとアレクの「ちゃらちゃらしてんじゃねー
よ」という姿勢。しかし、根っから不器用で硬派な性格から来るタイガのそれと、ア
レクの一途なまでの思いは、実は全く異なるものでした。幼少期に不良に絡まれたと
ころを救ってもらった、自分の方は向いていなかったけれど、助けてくれた人は自分
のことを「ダチ」と言ってくれていた、それはとてもとても記憶に残る出来事だし、
助けてくれた人を英雄視するのに十分な出来事です。格好良い。とても格好良い。そ
れだけでも十分に格好良いのに、それがプリズムスタァ、ストリートのカリスマ黒川
冷だった。それは、一人の人間への感謝以上に、「ストリートのカリスマ黒川冷」を
英雄視し、崇拝し、もちろんファンになる、そんな気持ちになります。当然です。プリズムショーをテレビでチェックし、黒川冷の記事が掲載された新聞は購読する。アレク回の中で、新聞がアイテムとして描かれているのは黒川冷絡みのシーンだけで
す。スナックと新聞はあまりマッチしないとはいえ、古新聞のような描写もありませ
ん。大和家、スナックヘル、もしかして新聞読む慣習ないのでは。幼少期アレクは、
黒川冷が載っている新聞をわざわざ買って、ママの前で読んでいたのでは。「あのとき冷の身体は浮いていたんだ!」「何言ってるの?」は、そうであるなら、アレクの持っていた新聞をママは読んでいないので、それは息子が何言ってるか理解できないよな、と思いました。
そんな大好きで大好きな黒川冷が、楽しみに楽しみにしていた大会に出ない。そのま
ま表舞台から姿を消してしまう。ここから「僕がストリートのカリスマになるん
だ!」までの思考の飛躍は、正直凡人の自分には理解しきれない部分でもあります。
あのとき助けてくれた冷のように強くなるんだ→筋トレを始めたらしばらくして「ス
トリートのカリスマ」を名乗るプリズムスタァが現れる、しかも凡そ自分の憧れてい
た黒川冷とはスタイルが違う。あんな奴にストリートのカリスマは名乗らせない。自
分がその位置に付いてやる、というところでしょうか。書いていて今も全然整理でき
ていないのであと10回は見ようと思っているのですが、おそらくアレクは黒川冷になりたいとは思っていないのではないでしょうか。黒川冷のことが好きで、憧れてはいるものの、アレクが「ストリートのカリスマ」の位置に拘るのは、そこに不適当な者(アカデミーもストリートもない、という自分とは異なる思想の持ち主である、というだけですが。もちろん。)がのうのうとのさばっているのが許せないだけ。自分の信じ、憧れた謂わば「元祖ストリート系」を守りたいのであって、必ずしも自分が黒川冷の後継者としてストリートのカリスマと名乗りたいと思っているのかというと、なんとなくですが違う気がします。この辺は本当に分からないですが…書いていて一ミリも自信がない。こんなにアレクのことは好きなのに。でもそうであるなら、「君は黒川冷になりたいのかい」と問われた仁科カヅキとは正反対だな、と思います。正反対だからこそ好敵手になれるのかもしれない。

ここまで真っ直ぐな想いを、言い換えれば理想を抱いた人間は、時に頑固で、時に暴
走します。「理想を抱いて溺死しろ」というのは私の大好きな言葉の一つですが、そ
うであってはいけないのです。死んでしまうほど頑なな気持ちは、それは理想ではな
くて意固地であり、そして我が儘なのです。実際、前作ではその頑なな理想の前に暴君と化し、破壊者となってしまった彼をここまで穏やかな顔に変えたのは、間違いなく周囲の愛情あってこそです。

大和アレクサンダー最大の理解者にして最大の味方、大和ヴィクトリア。一度海洋に
出てしまえばしばらく帰ってこない旦那、ぜんそく気味の息子、日本人ではない自
分。彼女には彼女の苦労があったはずですが、それが語られることはほとんどありま
せん。幼少期のアレクに「外行って遊んでなさい」と言ったり、浮いていたと憤慨す
るアレクに同調するでもなく「何言ってんの?」と突き放したり、プリズムカップ
勝を見に行きたいと駄々をこねるアレクに「そんなお金うちにはない」と言い放った
り、ヴィクトリアは「息子にただひたすら手をかける、様々なものを買い与える」タ
イプの親ではありません。それでも、幼少期の写真を職場に飾ったり、お腹が空いた
まま出ていこうとするアレクにカレーを出してくれたり、「育ってくれただけで嬉し
い」と言ったり、香水の香りがアレクに移ってしまうほどのアツいヘッドロックをキ
メたり、大会前にエールを送ったり、ヴィクトリアが画面に映るすべてのシーンで、
彼女のアレクへの愛情が溢れ出していました。アレクも年頃らしく照れながら、ちゃ
んと母の愛情には気付いているのでしょう。EZ DO DANCEーアレクverーの出だしと母の指輪が同じだったり、母のネックレスとアレクのバンダナの留め具が同じだったり、果ては華京院学園の学祭に母親の格好で出ようとしたり!愛情は、注ぐ側と受ける側がぴったりかみ合わなければなりません。お互いの向いている方向が違えば、注ぐ側はたくさん与えているつもりでも、受け取る側は全然受け取れていないこともあります。この親子はそういうすれ違いのない、素敵な環境だったのだなと思います。本当に、素敵な親子関係です。

そしてもう一人、大切な存在、黒川冷。アレクの理想の存在としてあり続け、重要な
場面でちゃんと出てきて、アレクに必要な自己肯定感を与え、アレクを一つ上の段階
に引き上げてくれた、まさに恩師。
黒川冷の登場はカツアゲにあっていたアレクを助けるところからでしたが、これがま
ずアレクの自己肯定感の端緒となっているのでは、と思っています。アレクの幼少期
は(今もかもしれないけれど)完璧に「ハーフ」です。金髪碧眼(紫眼)、色白。弱
い者いじめをする者にとって、「違う」というのはわかりやすく標的を定めることの
できる、免罪符のようなものです。絶対に免罪符ではないのですが。そうやってカツ
アゲの、いじめのターゲットになったアレクを救い出し、「ダチ」と呼んでくれた黒
川冷は、実はレオくん回で私たちが涙した「みんなと違ってもいいじゃない」を当時
から体現していた存在であり、そうやってアレクを「偏見」や「生き辛さ」みたいな
ものからも救ってくれたのではないかと思いました。それがあのシーンだとしたら、
黒川冷はまさに「救世主」です。
そして大黒ふ頭で再会した際の、名言の数々。すべて文字に起こして留めておきた
い、でもそろそろ長くなってきたのでこの感想の終わりも考えないといけない。とに
かくとにかく大好きの言葉しかないのですが、何よりも何よりも、「Youは良い子だ
Yo」に本当に泣きました。今までアレクにこんなこと言ってくれた人が(ヴィクトリアを除き)いたでしょうか。その姿から付いた二つ名は、ストリートの暴君、プリズムショーの破壊者。街を歩けば道を譲られ、シュワルツローズでは「あいつは違うから」と遠巻きにされ、名前を出せば「怖い人」と言われ、目の敵にされる。大好きな男の子がそんな扱いを受けて、辛くなかったと言えば嘘になります。もやもやした気持ちがなかった訳ではありません。そんな私の好きな男の子を、3年間好きだった男の子を、黒川冷は「良い子」と言ってくれたのです。アレクも嬉しかったでしょう。でも、私だって、私たちだって、嬉しかった。アレクの良いところ、いっぱい知っているのに、そんな風に言ってくれる人全然いなくて、偏見だけが一人歩きして、どんどん悪い人になっていった大好きな男の子を、細かい理由とか、理屈とか、そういうことではなく、「良い子」と言ってくれた。ここで流れた私たちの涙は、私たちの、今まで抱いてきたもやもやや、なんだかなぁという納得のいかなさや、まぁそういうところもアレクの良いところですしそういうアレクが好きなんですしという強がりや、そういう気持ちを全部全部溶かして劇場に流してくれた涙でした。そうでしたよね。そうだったと思います。

そして「今までの自分とは違う」とアレク自身が自分との決別宣言をして、私たちも
これまでの私たちと決別して、後半へと突入します。